井口小学校講演報告 1

 

 10月4日(金)、僕は電動車イス用の福祉タクシーを利用して熊野町の自宅を AM.8:00 に出発。広島西区にある井口小学校までは、広島の市街地を真横に東から西に突き抜けて行かなければなりません。ちょうど朝の交通ラッシュの時間。講演の開始時間は9時30分からだったけれど、万が一のことも想定して、僕はぜったいに遅刻をしてはならないという思いがあったのです。

 井口小学校には順調に8時30分に到着。玄関先で校長のN先生と教頭先生が出迎えて下さいました。早速全校学習会が行われる講演会場の体育館を下見して、障害者用のトイレの場所も確認して、それから校長室へと招き入れられ、ひとまず小休止をとりました。これでようやっと、余裕を持って講演に臨むことができます。

 

 待ち時間を利用して、校長のN先生に井口小学校の子供たちの様子と、井口町地域についていろいろなお話をお伺いしました。井口小学校の児童たちは、広島市街地の小学校の児童のような都会っ子でなく、まだまだ田舎育ちののんびりしたところがあるように見受けられるとN先生はおっしゃいます。

 この井口町地域は、昭和36年に広島市西区に編入・合併されるまでは、佐伯郡井口村の村政を施行していたところでした。大昔から半農半漁で自立した地域で、広島城下への出入り口をなす交通の要衝でもありました。そのためか今でも住民の自治意識は強く、広島市政とは一線を画す独立心にあふれているそうです。
 毎年、広島県佐伯神楽共演大会が開催され、お神楽まつりには井口地域の独自のお神楽が披露されています。夏祭りのシーズンには、住民自治会の若手メンバーが、安芸郡熊野町に在住の花火のくす玉づくりのお師匠さんから直接技術を習って、今では自分たちで花火玉をつくって打ち上げているのだそうです。

 

 このお話を聞いて僕は、僕が住んでいる熊野町も未だに広島市政に組みせず独自の町政を進めているし、井口町と不思議なつながりを感じました。井口小学校の井口っ子たちは、そんな井口村の伝統的な気風にはぐくまれた子供たちでした。
 僕には、少し笑えてくることだけど、未だにカメラマンのクセが抜け切れていないのか、事前に予備知識を得るため、校長のN先生へ取材とインタビューをさせてもらったおかげで、少し高鳴っていた気分を落ちつかせることができました。

 いよいよ時間がせまって、僕はN先生に先導されて、約800名の全校生が待つ講演会場の体育館に向かうことになりました。
 僕がなぜ井口小学校についてすぐに体育館に向かったかと言えば、実は生徒たちの席順がどのように配置されているか確認したかったからでした。
 
 僕の今回の井口小学校の講演を、依頼を受けた1年前からかなり条件が悪く、僕の話の内容をうまく伝えることには多くの困難があると思っていました。

1.先ず井口小学校は全校生と約800名のマンモス校であり、全児童を一同に体育館に集めた全体学習会

  であること。
2.1〜3年の低学年用と、3〜4年の高学年用と2回にわけた講演ではなく、全校生を対象にした一回

  こっきりの講演であること。
  (実際に校内間では、幼稚園を卒園してきたばかりの1年生と、来年中学校に進学する6年生とでは、

   まるで実社会における子どもと大人の差ぐらいの意識の違いがある。それを全生徒に理解してもらえる

   ように話の内容を変えて伝えることなど、ほとんど不可能に近いと思える)
3.事前に各学年の教室で予備知識を持たす学習会をするでもなく、いきなりその日のぶっつけ本番の講演会

  ・学習会の企画であること。
  (これでは、ある日突然知らない電動車イスのオッサンがやって来て、唐突に、”「電動車イスひとり

   旅」から学んだ感謝の心” なんて話したって、子供たちにすれば、「なんのこっちゃ!」とばかりに、

   ぜったいに理解されないだろう)

 そのために僕は、企画担当のS先生に、僕の「電動車イスひとり旅」やその出版本について、恥ずかしいことですが広島の各テレビ局で放映されたものをDVDビデオと、新聞報道されたし記事のコピーを送って、予備知識を得るための学習会を事前に校内で取り組んでください、ということ。
 また当日の体育館の生徒たちの全席順を、正面の演壇に向けた一方通行の並べ方にするのではなく、話し手が体育館中央にあって、その周りを取り囲むように設置してくださいということを、お頼みしました。

 僕が高い演壇上から一方通行で最後尾の生徒に話しかけたところでうまく伝わらないだろうし、最後尾の生徒には僕の顔も表情もよく見えなくて、話の流れに集中できず退屈するだけです。僕が全生徒が囲んでいる真ん中で、電動車イスでぐるぐる回れば、子供たちの反応も受けとめやすいし、

 

 「この電動車イスで北海道まで行きました」って、

 

実際に運転してところを見せたほうが、みんな興味を持つし集中するし、最後まで何とか話にアキ(飽き)がこなくて退屈もしないだろうと思ったのです。

 

 S先生は職員会議で図って、僕の案の通りに席順を設定してくださいました。特別の配慮で僕のわがままをかなえてくださいました。

 当日の講演会場で起きることは、すでに結果でしかない。それまでに学校側・主催者と講演する側の双方に、どれだけの準備がなされたかで成否が決まる。

 

 井口小学校の教職員のみなさまへ、ご協力ありがとうございました。

                           (全校学習会についての案内状より抜粋)


 僕は体育館の入り口で待機。
このとき、教頭先生が開演に先立ち、十数人の心身障害児のための特殊学級「イエロー・スマイル・クラス」の生徒たちを紹介していただきました。一人ひとり自己紹介をしてくれて、とってもかわいらしい子供たちでした。

 そしていよいよ、司会進行役のS先生の紹介で僕は会場へ。体育館にはあふれるほどの約800名の全校生徒が一斉に僕に振り向きます。保護者席にはすでに20人以上のお父さんお母さん方が臨席されていました。

 大きな拍手の中、僕はひと息、深呼吸を入れてから会場内を大きく見まわし、そしてゆっくりと電動車イスを会場中央へと進ませていったのです。

                                        つづく・・・

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