『 ゆきむし 』
「今年も、ゆきむしが、いっぱい飛びはじめたよ」
北海道の友人が電話で教えてくれた。
そうかぁ....、飛びはじめたのか...、もう、北海道は冬だねぇ。
寒くなった野山にとびかうゆきむしの姿を思い浮かべる。
秋が終わり、木枯らしが吹き、雪が降りそうなになると、
季節の到来をおしえてくれる。
澄んだ、青白い、小さな小さなはねをいっぱいつけて、
あわ雪のように、ふーんわり、ふーんわりとやってくる。
僕の手のひらにおいでって、招き入れると、
手のひらの小雪がさあーっと溶けてしまうように、
指にかすかに触れただけで、死んでしまう。
小さなはねが、はりのように身体に刺さって、イタイイタイっと泣いているのかな。
ごめん! いそいで空にかえしてあげても、
あわ雪のようにひらひらと落ちていった。
ほんとうの名前は知らない。
繊細で、そこはかないこの虫を、北海道(ここ)の人は、ゆきむしと呼んでいる。
雪に、においがある。
いまにも雪が降りそうになると、天からにおいが降りて来る。
曇り空を見上げ、「雪が降るね?」 と問うと
村の古老は、「うん、うん」と笑っている。
あれは、ゆきむしが教えてくれているんだろう。
てりー