海鳴りのどよめきをおしひろげて歩く ー第1部ー

ー老後保障確立国民大行進写真記録集ー

  32日間、600キロを歩き抜いて、9・15全国高齢者集会に到着、(東京都体育館、千駄ヶ谷)

 

          わたしたちは何に向かって歩いたか

 

                                  星 惣七郎

                                  老後保障確立国民大行進団長

 

 苦しめられ、いじめられ、耐えしのびながら明治・大正・昭和の初期の世代を生きぬいて、やっと握りしめた平和憲法と民主主義のその中からわずかな福祉に手をかけた時は、もう自分達の年齢は60の坂をはるかに越えていた。

 

 厚生省前の寒空に何回か若者にささえられて座り込む。少しずつ願いが届くかの様に見えた。だが反面、福祉切り捨て、後退がささやかれる。

 

 私達はもう待てない。時間がない。

 

 私達には或いは間に合わないかもしれない。何も残すものもない。せめて子や孫になんとしてでも私達の道をふたたび歩ましてはならない!!

 

 老後保障の急務を全国の老友に訴え歩き続けた行進団(京都から東京まで)。この間全国の仲間は勿論、地方自治体、婦人・青年、各民主団体に至るまで共感を持って支援して下さった。

 

 私達はこのことを決して忘れることは出来ない。この友情と支援をしっかり握りしめ、これからも老後保障確立をめざして共に歩み続けなければならない。

 

 

                            奥付

                            海鳴りのどよめきをおしひろげて歩く

                            ー くらしをまもれ、福祉をまもれ、

                              老後保障確立国民大行進写真記録集 ー

 

                            監 修  星 惣七郎

                            編 集  老後保障確立国民大行進実行委員会

                            写 真  中田輝義ほか

                            記 録  行進団事務局

                            刊行日  1978年12月1日

                            出 版  ばるん舎

                                 東京都杉並区・・・・・・・


                                      静岡県島田市 8月31日

 


ひでりつづきの政治の中で

 

 

               ひでりつづきの政治の中で

 

 

               わたしたちは歩く

               ひでりつづきの政治のなかを歩く

               わたしたちの人生にひと足ずつ

               この国の歴史を重ね合わせて歩く

 

               こわされてしまった自然と老後と

               不況の荒地をひたすら歩く

               戦争で死んだ友の無念さをこめて歩く

               病床で歯磨きをする仲間の思いを確かめて歩く

 

               仕事をよこせと歩く

               年金を医療をと歩く

               台風の日には自殺したもののために歩く

 

               敗戦の日から敬老の日まで歩く

 

               老人は医者にかかりすぎだと厚生省はいう

               だから老人医療は有料にするという

               自衛隊は増強すると大臣はいう

               老人福祉に予算を使うのは枯木に水だいう

 

               お父さんお母さんを大切にしようとテレビがそらぞらしくいうが

               政府はもう口先にしろ敬老はいわず

               円高でのもうけをかくしこんだ大企業のために

               国民の生活を見捨てて巨額の金を注ぎ込む

 

               わたしたちは歩く

               嘆きを怒りにかえて歩く

               どんな炎天下でもこんな政治よりましだと歩く

 

               暮らしを守れ! 福祉を守れ! と歩く

               すべての老人の願いを束ねて歩く

 

               京都から東京へ歩く

               一歩一歩人間の尊厳をかけて歩く

               海鳴りのどよめきをおしひろげて歩く

 

               だれもが

               いつでも

               安心して暮らせる老後保障確立をめざして

 

 

                                   ともろぎ・ゆきお(詩人)

                                  (行進団事務局長 上坪 陽)

 

                要 請 事 項 

 

 

一、老人医療の有料化などを絶対にせず、年齢引き下げ、内容改善・拡充など、老人を大切にする医療体制を  つくってください。

 

二、今の時代にきちんと生活できる年金を即時確立してください。

 

三、永年の経験をいかし、働く意欲にこたえた仕事と賃金を保障してください。

 

四、老人ホームや老人ヘルパーなど、福祉の内容を、格段に拡充してください。

 

五、住まいの確保、国鉄など交通運賃の優待制度実施、郵便料金の割引など、社会的にくらしやすい制度を   つくってください。

 

六、地域でこれらのことが実現できるよう地方自治体の財政を国が保障してください。

 

                                    (総理大臣への直訴項目)

 

 

             贈られた千羽鶴をかけ、決意表明をする星団長

              (大阪府庁職員講堂での壮行会、8月14日)

 

 

    8月15日、いよいよ行進開始。熱帯夜につづくむし暑いお盆の朝でした。京都市役所前。

 

                 京都三条大橋を渡って、東京へ。

 

                  あの山の向こうが琵琶湖。

 

            「ほんまに行きつくやろか」と、危ぶむ声も。(8月15日)

 

東海道、島田宿を行く

 

8月31日(木) 金谷→島田→藤枝→岡部

 

 全行程の半分。星団長は爪がはげ、気力で歩きつづけている。小石があたっても飛びあがるほど痛む。事務局長のともろぎさんもマメの上にマメができ、極限状態。

 

 大井川を渡ったところで川会所が残っていた。どの市も老人福祉に関心が強い。お話を聞くつもりが、逆に教えを乞われたりもした。

 

 大きな建物の福祉センターを一カ所たてるよりは、各住居地域に憩いの家をつくる傾向のようだ。老人の就労も地場産業や公的事業と結びつけと順調に運営されている。

 

 藤枝では新婦人の会の人から老人劇団や福祉の状況の話しを聞いた。岡部は玉露の産地。

 

                                (枠の写真はクリックで大画面に)

    

       魚行商の人(70歳)が、あまっている氷をわけてくれて、行進団をはげましてくれた。

 

      すこし魚のにおいがしたけど、暑さとかわいたのどを潤してくれた。

 

               道中で一番疲れはてていたころ、

 

     行進団を引っぱってくれた森岡こう副団長と久保三郎さん(ともに全日自労愛知)。

 

 

 

 

 

箱根峠を越えて、いよいよ関東へ

 

 

9月6日(水) 山中新田→箱根峠→芦の湯

 

 

 前日から終日の雨。だんだん激しく降り出すなか、箱根路へ。天下の険をひたすらのぼる。

 

昼前、雨は小雨になって、その後濃霧に。

 

峠の手前で越境の乾杯を熱いコーヒーで。冷えた身体をあたためる。

 

 

 

 箱根峠の頂上での、神奈川の歓迎陣との待ち合わせにおくれまいと、

 

急な坂道をけんめいにのぼる。

 

 シャツは汗と霧を含んでびっしょり。

 

 

 それから100メートルも行かないうちに、突然霧の中から、神奈川の歓迎陣があらわれた。

 

 神奈川高齢者連絡協議会の大石会長をはじめ、

 

横須賀、横浜、川崎、逗子、戸塚など各地域の老後保障確立団体、

 

県職労、横浜市従、全医労、建設労連、民医連、新婦人の会、

 

神生連、保険医協会、商工団体連合会、全日自労などの人たちが

 

大きな拍手で出迎えてくれた。

 

 

 

  急な知らせで小人数のお迎えになってしまいました。

市への要請後、あいにくの雨と嵐がだんだんと強まり、星団長の健康が気づかわれてなりませんでした。

 

 思えばあっという間に近づいてきた老い。

苦しい戦争をくぐり抜け、夫まで奪われてしまった老後。

年金と医療無料制度こそは切実な願いです。

 

 身近な人たちを見るにつけ、これ以上、老人医療などを改悪させてはならない。

改良こそをと署名を集めております。

 

                            四条悦子 (三島・新婦人の会、67歳)

 

 

 

 

 

 

 

千代子夫人と握手をする星団長

 

 

  新しく加わった神奈川の仲間たちととともに峠の頂上から歩き出すと、

 

 先程までの霧がうそのようにさっと消えて、大快晴になった。

 

  心まで晴れわたり、勇んで箱根の町へ下る。

 

 

                                     宮下史枝ちゃんの絵日記

 

          箱根峠越えを家族づれで登りきった三輪さん一家。(芦ノ湖)

 

 

                箱根峠の長い坂道をくだって、箱根の町に着いた。

 

                今日もいろいろあった。

 

                仲間と再会できたうれしい一日だった。

  

                今日はここまで。

 

                明日は小田原をめざす。

 

 

 

 

9月7日(木) 芦の湯→小田原 

 

 

 前夜、いつものように洗っておいた洗濯ものを取り込む星団長。

 

さあー、出発だ。 (芦の湯の宿にて)

 

 

             曲がりくねった、谷が深い街道を下る。

 

             下り道ばかりだと、膝がおかしくなる。

 

 

 箱根湯本から全日自労の人たちが多勢で加わり、

 

小田原市内では民主商工会の方が先導してくださった。

 

 商店の人たちから声援が飛び、骨董屋さんが追いかけてきてカンパを手渡してくれた。

 

           子どもたちがチラシをくばっていると、「いい子だね」と言って、

 

                 パン屋さんがパンをくれた。

 

 

              東海道から小田原城のそばをを通って、駅前で解散。

 

             星団長のお礼の言葉。

 

              明日は駿河湾の海を見ながら、大磯をめざす。

 

 

 

 

横浜、川崎、雨の中を行進団は行く

 

 

9月12日(火) 横浜→川崎

 

  神奈川県庁へ要請。小雨の肌寒いなかを横浜駅へ。

 

 誰もが一生けんめいに歩く。

 

  京都を出発したときの炎暑が、30日の間に、秋の気配に変わっている。

 

 鶴見橋からは、川崎市民協、医療生協、全日自労神奈川などの人たちも加わって、

 

  この大行進の成功を共有して歩く。

 

 

             神奈川県庁では、玄関前で歓迎セレモニーが行われた。

 

 

        この行進の中で多くの老人たちの願いをひろい集め、胸に熱くおさめてきた星団長、

 

              そして副団長の高橋悦郎さんと森田久夫さん。

 

              神奈川県庁側の挨拶を、一言も聞きもらすまい。

 

 

 オイルショック以降現在まで、あまりにも矛盾だらけの世の中でのこの度の大行進は、非常に大きな成果であり、永久に忘れることはできないことだと思います。

 

 雨の中を歩く行進団に頭を下げる老人の姿を見ただけで、何を頼んでいるのかよく分かります。

 

 各所でいろんな階層の方々がカンパをしてくれました。どうしてもこの大行進をやりとげばければと思いました。

 

                                副団長 高橋悦郎 (全日自労東京)

 

 

 

            この雨の中、老人たちはなぜ歩いているんだろう。

 

              このお年寄りたちを雨が降っているのに、

  

             歩かなければならなくさせているものとは、

 

                 いったい何なんだろう。

 

 

 

                横浜駅近くのガード下で、歓迎集会。

 

                地元出身の議員の挨拶を受ける。

 

 

    川崎市庁では、伊藤三郎市長が自ら玄関前に行進団を出迎えて、労をねぎらってもらった。

 

   

                 川崎市役所講堂で歓迎セレモニー。

 

        涙を流して星団長を迎える人びと、抱き合ってお互いの健闘をたたえる人など、

 

                   感動の連続だった。

 

 

 

 多くの人たち、団体の死にものぐるいの活動と協力で、無事行進ができたことをうれしく思います。本当にありがとうございました。

 

 生まれてからずーと20年間、川崎市に住んでいるものですから、京都から東京まで行進して、山林、魚のすむ川、田畑、大きな湖、きれいな海、昔のままの家並みなど、世の中は広いなあーと思いました。

 

 沿道の人たちの反響は非常に大きかったです。行進団が歩いていると、軒並みのお年寄りたちが出てきます。「お暑うございます」「こんにちは」と言ってビラやチラシを手渡すと、「おおきに」「ありがと」と言って受け取ってくれます。

 

 8月18日ですが、障害のある女性が足を引いて歩いてきて、「私は障害者ですが、(私ができない分も)頑張って下さい」と激励してくれました。

 

 8月21日には、83歳の女性が、「宣伝カーの放送を聞いて冷たい麦茶を飲んでもらおうと思って出てきました」と言ってごちそうしてくれました。

 

 8月30日には、若い女性が後ろから追いかけてきて、「ずっと歩いている方ですか?」と聞いてから、封筒に入った千円のカンパを。

 また高校生ぐらいの二人から「募金をやっているんですか?」と言って、百円のカンパをしてくれました。

 

 8月31日には、70歳の魚行商の人が、あまりにも暑い日に、魚を冷やしている氷をにおいがするのもかまわず、「よかったらどうぞ」と別けてくれました。

 

 その他にも、自転車やオートバイに乗った若い人のカンパもありました。どんどん仲間が増えて、みんなが協力し合って成功したすばらしい行進でした。

 

 

                                高瀬 清 (日本社会事業大学生)

 

註:星団長らとともに、京都から全行程に歩く。在学中に行進団のことを知り、自ら志願して参加してきた。

 

 

 

                    川崎市庁前を出発

 

 

 

             明日は六郷大橋を渡って、いよいよ東京都へ、

 

         厚生省への申し入れや、総理大臣官邸への面会が待っている。

 

 

 

              この老人たちの切ない願いを胸に抱いて。

 

 

                第 1 部

                ー 完 ー

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